新聞の見出しについての一考察>



先日ある新聞記事があった。(日経8/22)その見出しには

日本の雇用慣行 もう古い><肯定派:終身雇用22%、年功賃金7%>とあり本文の
最初の部分が
大企業の社員で、日本的雇用慣行とされる年功序列の賃金制度をこれからも維持す
べきだと考えていつ人は約7%で、終身雇用制度維持派も約22%の少数にとどまって
いることが21日労働省の調査でわかった

ではじまる。

この見出しをみている範囲では従前の"終身雇用、年功賃金"という日本的雇用形態から
大きく変わってきていることを思わせる。はたしてこの数値を本当に信じてよいものな
のだろうか?
記事の全体をよく読んでみることとした。すると見出しにあるようなことは必ずしもい
えないと思われるのでそれについて解説をし、新聞見出しについて考えてみたい。

調査条件は新聞には一部割愛されていたので労働省のHPにて調べた。調査は労働省に
よって行われたもので、従業員1000人以上の企業のサラリーマンに対して行われた。回
答は郵送によるものであった。課長クラス1名に対して一般社員3名そのうち1名は女性
ということであった。(労働省のHPにはこのあたりの資料がきちんと整理されていてよ
かった)
大きなテーマは"終身雇用"と"年功賃金"についてであった。回答の選択肢としては
  1)現行制度を維持すべきだ
  2)部分的な修正はやむを得ない
  3)基本的な見直しが必要     であった。
新聞での表記はこのうち1の現行制度を維持すべきだについての比率を表記したもので
あった。
それでは中間的な意見である"部分的な修正はやむを得ない"というものについてはどの
程度の割合であったのだろうか?これらについては年功賃金については約50%であった
終身雇用については56.4%であった。これを"見直しの必要がない"ものに加算をすると
どうなのだろうか。半分以上の人が軽微な変更程度までの容認していることになり、決
して新聞の見出しにあるような状況にないものといえないだろうか?

実績主義の叫ばれている世の中、見直しがまったく必要がないと考える人というのはさ
すがに少数派であろう。(また選択肢としては"やむを得ない"というかなり弱めの言い
回しをしていることもある。)アンケートの数値からいえることは現行の日本的雇用を
中心とした見直しなのではないだろうか。そうだとすると新聞の見出しにより世論が誘
導されてしまう危険な例といえるのではないだろうか。

(年功賃金)
維持すべき:7.3% 部分的な修正:49.4% 基本的な見直し:35.6% 不明:7.7%
(終身雇用) 
維持すべき:21.6% 部分的な修正:56.4% 基本的な見直し:18.5% 不明:3.5%

アンケート調査を別の角度でみてみよう。
1) 郵送での回答
郵送での回答であるので社内での記名式でアンケートを実施した場合に比べて比較的記
入者の正直な意見を吸い上げることができると思われる。しかし会社単位での協力を労
働省よりお願いしていることを考慮すると、社内でのそのアンケートの回答者というも
のの選別には偏りがあると十分予想される。総務や人事担当者が回答しているとすると
かなり
経営サイド的な回答が帰ってくるものと思われないだろうか。

2)回答率について
回答は約50%ということであった。こういうアンケートについて比較的保守的な人はそ
の意見をあまり述べたがらないのではないかと思われる。はっきりいって心の中では従
来の制度がよいと思っていても、やはり現在の労働環境にはそぐわないものであること
を認識しているだろう。あえてアンケートに従来制度の容認を書きたいと思う人はそん
なにいないではないだろうか。街頭インタビュー等においても、その調査以上に保守的
な結果が強いケースがよくある。これもそれに似たものではないだろうか。

以上のようなことから中間的な回答を"現行制度をベースにした改革必要派"として、また
50%の無回答者を保守的な回答の支持者として、若干保守的な回答の比率をあげてみて、
私なりに数値を類推してみると・・・。

約75%が"現行制度をベースにした改革必要派"であって残りの25%程度が"抜本的な改革"
を必要と考える人達(新聞の見出しを読み替えるとそれぞれ 78%、93%が必要と考え
る比率)なのではないだろうか。(これもかなり言い過ぎであるが)

確かに話題としては"実績主義"等はトレンドであり、確定拠出年金等の話もあり雇用の
流動も活発になってきた。新聞記者、新聞社としてもこれらの話題について積極的に取
り扱うことは読み手の興味を誘う。確かに今回の見出しはショッキングであった。私自
身は特に保守的な給与制度を支持しているわけではない。それぞれの人生の価値観も異
なるので人の2倍も働いているような人もいる。従来の給与制度で支給するのには無理
な部分が存在することも十分理解している。なのでこの数値の判断は各人の判断にお願
いしたい。

今回のテーマとしては新聞の見出しであった。新聞社もそれぞれの立場でかなり強力な
書き方をしてくるということが今回の記事であらためて認識された。普段から気をつけ
ていることではあるのだが、やはりいくつかの新聞を読み比べてみるというのは非常に
大切だということがわかる。そしてその真実については自分で分析を行う必要がある。
また見出しというものがとても大事なものだと再認識された。